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「賃料が上がった」という実感は、都心で部屋を借りたことのある方なら共通でしょう。そして一度上がった賃料は、なかなか下がりません。 売買価格が上下する局面でも賃料が高止まりするのは、両者の決まり方がまったく違うためです。 ■ 売買価格と賃料は別の論理で動く 売買価格は、金利、将来への期待、投資マネーの動きに強く反応します。実需だけでなく、値上がりを見込んだ買いも入るためです。 賃料は違います。決めるのは「いま住む必要のある人が、毎月いくら払えるか」です。将来の期待は入りません。所得と世帯数という実体だけで決まります。 だから賃料は動きが鈍い代わりに、いったん動くと戻りにくいのです。 ■ 高止まりの理由1 賃貸に出る分譲住戸が少ない 分譲マンションの賃貸、いわゆる「分譲賃貸」は、賃貸専用のアパートより設備水準が高く、人気があります。しかし供給は所有者の都合に左右されます。 売買価格が高い局面では、貸すより売ったほうが手取りが大きくなります。転勤などで一時的に貸していた住戸も、この機会に売却されます。結果として、賃貸市場に出てくる分譲住戸が減ります。 ■ 高止まりの理由2 買えない人が借り続ける 住宅価格が所得の伸びを上回って上昇すると、購入をあきらめる、あるいは先送りする世帯が増えます。その人たちは賃貸に留まります。 本来なら「買って出ていく」はずだった層が残るため、賃貸の需要が積み上がります。売買価格の上昇が、そのまま賃貸需要に転化する構図です。 ■ 高止まりの理由3 貸主のコストが上がっている 分譲賃貸の貸主が負担するのは、管理費、修繕積立金、固定資産税、そしてローンがあればその返済です。 このうち管理費と修繕積立金は、人件費と建築費の上昇を受けて上がり続けています。固定資産税も、地価が上がれば評価替えで上がります。 コストが上がった分を賃料に転嫁しなければ、貸主の手元に何も残りません。値下げする余地が構造的に小さくなっています。 ■ 高止まりの理由4 単身世帯が増え続けている 人口が減っても世帯数は減りません。単身化と晩婚化により、世帯の数はむしろ増えてきました。 一人暮らし向けの住戸は、面積あたりの賃料が高くなります。同じ床面積を分割するほど、総賃料は上がります。都心で単身世帯が増えることは、賃料水準を押し上げる方向に働きます。 ■ 買うか借りるかの判断にどう影響するか 賃料が高止まりしているということは、「借り続けるコスト」が下がらないということです。 判断の材料として、次の三つを比べてください。 ・毎月の賃料と、同等物件を買った場合の返済額+管理費+修繕積立金+固定資産税 ・住み続ける想定年数。短ければ賃貸、長ければ購入が有利になりやすい ・売却時に残ると見込まれる価値。これが購入と賃貸を分ける最大の変数 三つ目が重要です。購入の実質負担は「支払総額 − 売却時に戻る額」で決まります。賃貸では支払った家賃は戻りません。 ■ 数字で確認する方法 ・国土交通省「不動産価格指数」で売買価格の推移を見る ・総務省統計局「小売物価統計調査」に民営家賃の項目がある ・アットホーム、東京カンテイなどの民間指数も参考になる 賃料は「変わらないもの」と思われがちですが、10年単位で見ると確実に変わります。長く借りる前提なら、その上昇も計算に入れる必要があります。
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