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「35年ローンを組むなんて重すぎる」——若い方が購入をためらう最大の理由です。 しかしこの考え方には前提の誤りがあります。35年で組むことと、35年住み続けることは別の話です。 ■ 35年ローンは「35年住む契約」ではない 住宅ローンは、いつ売却しても構いません。売却代金でローンを完済すれば、それで終わります。 35年という期間を選ぶ理由は、返済期間を長く取るほど毎月の返済額が下がるからです。同じ借入額でも、20年返済と35年返済では月々の負担が大きく変わります。 つまり35年は「長く住むため」ではなく、「月々を軽くするため」の選択です。 ■ 払ったローンは、家賃と同じになりうる ここが最も重要な考え方です。 10年後に売却したとき、売却価格がローン残債を上回れば、差額は手元に戻ります。この場合、10年間に支払った返済のうち、実質的に消えたのは利息と諸費用だけです。元金部分は資産として回収できています。 賃貸で10年間払った家賃は、一円も戻りません。 同じ金額を毎月払うなら、戻ってくる可能性のある払い方のほうが有利です。これが「東京で買う」という選択の核心です。 ■ 住宅ローン控除が効いている間は、金利負担がほぼ相殺される 住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%が所得税・住民税から控除される制度です。 借入金利が0.7%を下回っていれば、支払う利息より戻る税金のほうが大きくなります。実質的な金利負担がゼロ、あるいはマイナスになる状態です。 ※ 金利は変動します。この前提が成り立つかは、実行時の金利水準によります。近年は金利上昇局面にあるため、借入時点で必ず試算してください。 控除期間は、新築および買取再販で最長13年、既存住宅(中古)で10年です。要件は床面積や住宅の性能によって異なるため、国税庁のサイトで最新の条件をご確認ください。 ■ 10年から13年が、ひとつの区切りになる 住宅ローン控除が終わるころ、多くの人の生活も変わっています。結婚、出産、転職、転勤。必要な広さも、住みたい場所も変わります。 このタイミングで売却して住み替えれば、次の物件で住宅ローン控除をもう一度受けられます。控除は「一生に一度」の制度ではありません。 20代半ばで最初の一戸を買い、35歳前後で住み替える。45歳までにもう一度買っても、完済年齢80歳未満の条件下で30年前後のローンが組めます。 ■ ただし、税制には落とし穴があります 住み替えを考えるうえで、必ず知っておくべき点があります。 売却で利益が出たとき、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」を使うと、新居の住宅ローン控除が受けられなくなります。売却した年とその前後を含む一定期間が対象です。 つまり、譲渡益に対する特例と、新居の住宅ローン控除は、どちらかを選ぶことになります。 ・譲渡益が小さい、あるいは出ない場合 → 特別控除を使わず、新居の住宅ローン控除を取る ・譲渡益が大きい場合 → どちらが有利か試算して選ぶ 判断を誤ると数百万円単位で変わります。売却を決める前に、税理士または税務署にご相談ください。 もうひとつ。所有期間5年以下での売却は短期譲渡所得となり、税率が大きく上がります。この点でも、10年程度の保有は理にかなっています。 ■ 値上がりすれば、貯蓄と同じ効果になる 売却価格が残債を上回った分は、そのまま現金として手元に入ります。 毎月の返済が積み立てになり、値上がり分が上乗せされる。強制的な貯蓄として機能します。賃貸ではこの効果は得られません。 ■ だからこそ資産性がすべてを決める ここまでの話は、すべて「売却価格が残債を上回る」ことが前提です。 残債割れ、つまり売却額がローン残高を下回る事態は、起こりえます。そうなれば差額を現金で埋めない限り売却できず、住み替えの自由を失います。 この一点にリスクが集約されているからこそ、物件選びが決定的に重要になります。 見るべきは次の点です。 ・立地 駅からの徒歩分数、乗り入れ路線、始発駅かどうか。徒歩7分以内とそれ以上では、10年後の差が大きい ・管理状態 管理組合が機能しているか、大規模修繕が計画どおり実施されているか、修繕積立金は足りているか ・環境 生活利便施設の厚み、学区、再開発やインフラ整備の計画 ・建物 総戸数(少なすぎると修繕の負担が重い)、施工会社、耐震基準 ・間取りの汎用性 自分の好みより「次に買う人が探している形か」 管理状態は特に見落とされます。同じ築年数、同じ立地でも、管理の良し悪しで10年後の価格に明確な差が出ます。総会議事録と長期修繕計画は、購入前に必ず取り寄せてください。 ■ それでも急がないほうがよい人 ・転職や独立を具体的に検討している ・頭金がなく、諸費用まで借入に含めなければ買えない ・立地や管理状態を妥協してでも、価格の安さを優先しようとしている 三つ目が最も危険です。安く買えたつもりが、売れない物件を掴んでいた——これが住み替え戦略が破綻する典型です。 ■ 判断の手順 1 いまの家賃と、同等物件を買った場合の総支出(返済+管理費+修繕積立金+固定資産税)を並べる 2 住宅ローン控除でいくら戻るかを試算し、実質負担を出す 3 10年後の残債を返済予定表から確認する 4 同じマンションの成約事例から、10年後の売却見込額を推定する 5 「売却見込額 − 残債」がプラスなら、住み替え戦略が成り立つ 4の推定が難しければ、そのマンションの築10年時点の成約事例と、現在の築20年時点の事例を比べてみてください。同じ建物が10年でどう変化したかが、そのまま参考になります。 ■ 出口を先に考える 買う前に売ることを考えるのは、悲観的な発想ではありません。売れる物件を選ぶことが、住み替えの自由と資産形成の両方を可能にします。 「自分が住みたい家」であると同時に「次の人が欲しがる家」であること。この二つが重なる物件を選べるかどうかが、20代からの購入が成功するかを分けます。
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